
12月2日~13日にスペインのマドリードで気候変動COP25が開催される。近年、日本による石炭火力発電への銀行融資が国際的に問題視されており、その代表的な案件がインドネシアのチレボン石炭火力発電事業である。そこで、日本国内のNGO 4団体は、国内の大手銀行・保険会社の投融資方針について格付けする「フェア・ファイナンス・ガイド」日本版にて新たな調査報告書「腐敗にまみれたインドネシア石炭発電」を発表した。
本報告書では、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行が、国際協力銀行(JBIC)等と融資しているインドネシアのチレボン石炭火力発電事業における国際CSR規範の遵守状況を調査した。結果、赤道原則及びIFCパフォーマンススタンダードで計43箇所、国連グローバル・コンパクトで計13箇所、OECD多国籍企業行動指針で計10箇所の不遵守が明らかとなった。
特に2019年4月以降、チレボン石炭火力発電所2号機案件のEPC契約者である韓国企業・現代建設が、前チレボン県知事に多額の不正資金を提供したとの贈収賄疑惑が持ち上がっている。捜査を続けているインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)はすでに2019年10月、2号機案件に関連した贈収賄疑惑を含むマネーロンダリングの件で、前チレボン県知事をすでに容疑者認定した。また、2019年11月には、現代建設元ゼネラルマネージャーも容疑者認定を受けている。丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資する事業者の元上級幹部2名に対してインドネシア国外への渡航禁止措置がとられていることもわかっている。前チレボン県知事が有罪判決を受けた別の贈収賄事件に係る判決文の中では、すでに2号機案件の事業者や現代建設の贈収賄疑惑への関与が明記され、その手口についても詳細な内容が記載されていた。一方、2号機案件に関連した贈収賄疑惑は、韓国国会の国政監査の場でも質疑がなされ、現代建設の専務が土地紛争に係る資金の流れを示唆する答弁をしている。
この他、本報告書では、補償・生計回復措置の欠如、公害対策における利用可能な最良の技術(BAT)利用の欠如、環境アセスメントの不備と住民参加の欠如、行政訴訟と違法リスク、住民への人権侵害、気候変動対策への逆行等の問題を明らかにしている。民間銀行3行は、更なる貸付を行う前に、適切なデューデリジェンスを実施することが求められる。
※本報告書の執筆にあたっては、国際環境NGO FoE Japanの協力を得た。
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問い合わせ
・(特活)「環境・持続社会研究」センター(JACSES) 田辺有輝
E-mail: tanabe@jacses.org URL: http://www.jacses.org
・ 国際環境NGO FoE Japan 波多江秀枝
E-mail: hatae@foejapan.org URL: http://www.FoEJapan.org