
石炭火力発電からの脱却は加速しています。しかし、英国のシンクタンクE3Gの最新の報告書「石炭スコアカード2019年」によると、日本は2015年から5年連続でG7諸国の中で石炭火力発電の閉鎖で最も行動が遅い国と評されています(図1)。G7諸国の中で唯一、国内外で新規の石炭火力発電所の建設計画を続行している国となっています。日本は特に再生可能エネルギーの普及が見込まれる東南アジアにおいて石炭火力発電事業を進めており、国外向けに石炭への投融資をしている国としては中国に次ぐ第二の大国です。日本が石炭火力発電への支援を継続することは、環境に配慮した高い技術力を持つ国としての国際的な評価を著しく低下させるものです。
しかし、民間企業は政府の政策より先んじており、過去1年間に国内で約4 GWの石炭火力発電所の建設が中止されました。石炭火力発電からの撤退は、G7諸国において特に顕著な国際潮流でもあります。今や115もの世界的な金融機関が脱石炭の方針を掲げています。昨年のスコアカード発表以降、公的機関および民間企業の双方から少なくとも30の石炭火力への融資を制限する新たな政策、または政策変更が発表されました。これは、G7全体の中でも、脱石炭を表明する機関・企業らの地理的な広がりが拡大し、規模が増大していることを示しています。カナダとドイツの輸出信用機関(ECAs)、米国の大手保険会社Chubb、イタリアの保険会社ゼネラリ保険(Generali)、さらに日本の三菱フィナンシャルグループや日本の商社である丸紅や住友商事の方針転換も含まれています。これらの市場動向を受け、より多くの国が石炭火力発電所の段階的閉鎖(フェーズアウト)を進めるための国内政策方針を策定することが期待されます。
2019年9月の国連気候行動サミットと世界から注目される2020年の東京オリンピックは、日本にとって最新の科学的知見とパリ協定に基づく政策・行動を世界に示す重要な機会となります。
図1: 「G7 石炭スコアカード2019年」 に示されたG7諸国の現状とその相対的ランキング
参照:「石炭スコアカード2019年」は、先進7か国(G7)の石炭火力発電所の段階的閉鎖(フェーズアウト)の過程を評価し、各国の市場動向と政府政策の状況、さらに脱石炭に向けた取り組みを比較評価してランキングしたものです。評価ポイントは、新規の石炭火力発電所のリスク、既存石炭火力発電所の閉鎖の進行状況、その国の取り組みの国際的な影響の3点です。英語による報告書はこちらから、日本語による報告書の要約はこちらからアクセスが可能です。